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最高裁判所大法廷 昭和33年(あ)411号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人松浦武、同塩見三俊の上告趣意第一点について。

思うに印象採得、咬合採得、試適、嵌入が歯科医業に属することは、歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条の規定に照し明らかであるが(なお、昭和二六年(あ)四四七六号、同二八年六月二八日第二小法廷判決、集七巻六号一三八九頁参照)、右施術は総義歯の作り換えに伴う場合であっても、同じく歯科医業の範囲に属するものと解するを相当とする。けだし、施術者は右の場合であっても、患者の口腔を診察した上、施術の適否を判断し、患部に即応する適正な処置を施すことを必要とするものであり、その施術の如何によっては、右法条にいわゆる患者の保健衛生上危害を生ずるのおそれがないわけではないからである。されば、歯科医師でない歯科技工士は歯科医師法一七条、歯科技工法二〇条により右のような行為をしてはならないものであり、そしてこの制限は、事柄が右のような保健衛生上危害を生ずるのおそれなきを保し難いという理由に基いているのであるから、国民の保健衛生を保護するという公共の福祉のための当然の制限であり、これを以て職業の自由を保障する憲法二二条に違反するものと解するを得ないのは勿論、同法一三条の規定を誤って解釈したものとも云い難い。所論は、右に反する独自の見解に立脚するものであって、採るを得ない。

同第二点について。

所論は単なる法令違反の主張を出でないものであって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

よって、同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中耕太郎 裁判官 島 保 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村又介 裁判官 入江俊郎 裁判官 池田克 裁判官 垂水克己 裁判官 河村大助 裁判官 下飯坂潤夫 裁判官 奥野健一 裁判官 高橋潔 裁判官 高木常七 裁判官 石坂修一)

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